インプラント治療のリスク
インプラント治療のリスクは、本ホームページの随所に記述されていますが、このコーナーでは全般的なリスクについて解説します。 インプラント治療のリスクには、一般的には「術中のリスク」だけではなく「術前のリスク」、「術後のリスク」があります。
- 術前のリスク
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糖尿病、高血圧症、動脈硬化性疾患などの生活習慣病や骨粗鬆症で骨が脆弱な方、喫煙、高齢などが術前のリスクです。
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糖尿病は、
免疫力や骨を作る骨芽細胞の活動を妨げるため、易感染性であったり、インプラントの骨との結合が得られない場合もあります。十分な血糖コントロール後インプラント治療をすべきです。
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動脈硬化性疾患は、
脳梗塞や心筋梗塞などを指し、高血圧症などにより引き起こされます。抗凝固剤を服用していることが多く観血手術であるインプラント治療のリスクになります。
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骨粗鬆症は、
骨を作る細胞の働きが衰え、相対的に古い骨を掃除する細胞の働きが活発になることで骨が脆弱になる病気です。BP製剤と言う骨粗鬆症の薬を服用中の方に、安易に抜歯やインプラントの手術をすると骨壊死を来す場合があります。担当医に対診し十分な休薬期間を設けることやがん治療目的で大量に使用している方は禁忌症として選別する必要があります。
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喫煙は、
たばこの煙の中の一酸化炭素が血液中のヘモグロビンと結合することによって血中の酸素が少なくなることやニコチンの血管収縮作用により血流が悪くなるため、血中の酸素や栄養分が組織に届きにくくなります。更に、ニコチンには免疫力を抑制し、細菌などの微生物感染への抵抗力を弱める効果が知られています。その結果、インプラントの骨との結合に支障を来たしたり、インプラント周囲炎に罹り易いというリスクが生じます。インプラントを思いたったら、禁煙を始めましょう。
- 術中のリスク
- インプラント埋入には、挿入窩の形成が必要です。これは、インプラントを植えるためにドリルにより骨に穿孔する操作のことですが、この際に血管や神経を損傷することがあり、神経麻痺の後遺や大量出血をきたす場合があります。また、上顎洞への穿孔により上顎洞炎を惹起したり、洞内へのインプラン体の迷入などが問題となります。対応策として、あらかじめCTで患者さんの埋入部位の解剖をよく調べて、安全な位置に埋入できるよう、しっかりとした治療計画の立案が必要です。
- 術後のリスク
- インプラントの手術が無事終わってもまだリスクはあります。例えば、観血的外科治療なので痛み・腫れ・出血・神経麻痺などの合併症が出現する可能性があります。また、インプラントは骨とは強く結合しますが,粘膜とはあまり強く結合しないので、天然の歯よりも感染に弱く、プラークコントロールが悪いとインプラント周囲炎を惹起し易くなります。また、埋入されたインプラントは長期間良好に機能し続けなくてはなりませんが、術前のリスクである基礎疾患、高齢、肥満、喫煙などは術後のリスクでもあります。そして、高齢者は少なくとも10年後には75歳以上、30年後には95歳以上に達します。その間に、担癌状態となったり、抗血栓剤や骨粗鬆症でBP製剤を服用するケースも多くなり、インプラントの骨結合が緩み、感染して脱落することも増加すると考えられます。また、脳梗塞、認知症、転倒での骨折などで寝たきりになるかも知れません。高齢者には、将来のことも良く説明し十分な理解と同意を得てから、インプラント治療を開始する必要があります。